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自白するべき?しないべき!?『ゲーム理論のポイントがわかる本』 part②

人間をプレイヤーとし

物事を考える「ゲーム理論

 

この理論を使えば

世の中の疑問が解けていく快感に浸ることができる。

「何故、同じような居酒屋が隣同士にあるの?」

誰でも持ったことのある

この疑問の回答はpart①を読んで欲しい。

https://yoshiyoshiyoshix.hatenablog.com/entry/2020/06/19/122138

 

今回は「ゲーム理論」の中で

具体的な事例をエピソードとともに紹介する。

 

予言しよう!

あなたの読後の感想は

「人生、そんなにうまくいかないモンだな~」

である。

 

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【目次】

①自白するべき?しないべき!?「囚人のジレンマ

 

 

暗く狭い取り調べ室。

刑事が容疑者Aに囁く。

「実はな、お前の他にもうひとり容疑者がいるんだよ」

Aの眉がピクリと動く。

その反応を確かめてから刑事が続ける。

「知らなかったのか。まあいい。

でもな、お前らのうち必ずどちらかが犯人だ。

確信している」

Aは表情を変えないように

顔の筋肉を強張らせた。

 

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「そこでだ」

刑事の声がワントーン落ちる。

「ひとつ提案がある」

「提案?」思わずAは訊いた。

「そうだ。悪くない提案だ。

もし、お前だけが自白したら、お前を無罪にしてやるよ!

そして、もうひとりの容疑者を10年間

刑務所にブチ込んでやる。

でもな、2人とも白状したら2人とも

7年間、刑務所でマズい飯を食うことになる!

どうだ悪くない提案だろ」

刑事は笑みを見せた。

Aは曖昧に頷きつつも

なんとか助かりたいという想いから、

言葉の意味を反芻する。

整理できたとき、ある疑問が浮かんだ。

おそるおそる声に出してみた。

「もし。もしもの話ですよ。

私が白状しなかったらどうなるんですか?」

刑事は口の端を曲げて微かに笑った。

まるでこの状況を楽しんでいるようだ。

「いい質問だな。

折角だから教えてやるよ。

もし、お前が黙っていて、もうひとりが自白したら

そいつは無罪放免。

お前は10年間刑務所だ。」

それだけは避けたいとAは瞬時に思った。

刑事が続ける。

「それとな、ここからが重要なんだ。

もし、二人とも黙秘を続けたらどうなるのか。

二人とも1年間だけ刑務所に入ってもらう。

まあ、痛み分けってことだな」

Aはただ虚ろな目で刑事を見るしかなかった。

刑事は腕時計にチラリと目をやった。

そして、ゆっくり椅子から立ち上がり

ひとつしかない扉まで歩いていく。

革靴のかかとの音がやけに大きく聞こえる

ドアの取っ手も持った時、こちらに向き直った。

「さて、どうする?

制限時間は30分だ。

ちょうど30分後にここに戻ってくる。

その時の答えでお前の人生決まるな」

 

呼吸が苦しい。

俺はどうすれば?

刑事の見透かしたような声が飛んできた。

「ついでにいうとな、もうひとりの容疑者も

別の取り調べ室で同じ提案をされているよ。

せいぜい考えることだな。

まさに運命の分かれ道」

扉の閉まる音が聞こえて

再び闇の静寂になった。

心臓の音だけが激しく聞こえる。

 

俺は一体どうすれば??

 

あなたならどうするだろうか?

ここでポイントを整理したい。

 

part①で述べたように

プレイヤーは常に

「自分にとって一番得な選択をする」

するとAにとってのBESTは「自分が自白。相手が黙秘」である。

しかし、それはBも同じだ。

2人とも同じ考えで、2人とも自白したら刑務所7年。

それだけは避けたい。

では、A・B双方にとってBESTなのは

「2人とも黙秘」だ。

刑務所には入るが、たった1年だ。

1年間、我慢すれば出られる。

自白するのは、いわばハイリスクハイリターン」

やはり黙秘しようか。

そちらの方がローリスクローリターンだ。

いや、待て。

違う!

もしAが黙秘して、

Bがイチかバチかのかけで白状したら。

Aは最悪の刑務所10年になる。

 

では、どうすれば?

このエピソードの答えは「答えはない」ということ。

だからジレンマなのだ。

 

しかし、このジレンマが生じるには条件がある。

A・Bがお互いに「信頼関係」ではないことだ。

 

もし、AとBがパートナーなら

揃って黙秘するはずだ。

お互いにとって最も痛みが少ないからだ。

 

もし、AがBの舎弟なら

B(兄貴)の無罪放免の為に

Aは黙秘するだろう。

 

(もちろん、それすら裏切る奴がいるが、、w)

 

このジレンマは

「世の中の不条理」と「信頼関係の構築の大切さ」

を教えてくれている。

 

②欲が深すぎ!!「牧草地の悲劇」

 

広大な牧草地。

その数㎞離れた村で

数人の畜産農家が牛を育てていた。

農家が牧草を時々取りに行き

朝昼晩に一定量をエサとして与えていた。

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ある時、牛の一頭が逃げ出し帰ってこなかった。

しかし、数か月後帰ってきたのだ。

大きな体をして。

牛は一定数のエサではなく

自然の牧草を食べ漁り、体重を増やした。

農家はその牛を売りに出した。

すると、他の牛より高値でうれた。

やはり、大きい牛は肉も多いし、

脂身をうまいとされるからだった。

 

 

そこで、農家たちは思いついたのだ。

それは「牛を牧草地に放し飼い」にすること。

農家たちは実際にそうした。

自分達は仕事もせずとも

牛たちは勝手に大きくなる。

ある程度の所で戻ってくる。

その時に売りに出せばいい。

もし、戻ってこなけらば、

こちらから出向いて捕まえる技術はあった。

 

農家たちは毎夜毎夜、ワインを飲みかわし

昼間は葉巻をくわながら本を読んだり

昼寝をしたりして過ごした。

 

ところが、数か月しても

一向に牛たちは帰ってこない。

 

仕方なく農家たちは

自分達で捕まえにいくことにした。

太陽の日差しを浴びながら

牧草地まで歩いた。

到着した時、彼らの目に映ったのは「絶望」だった。

牛たちのほとんどが死んでいたのだ。

 

「何故だ!?」

農家の一人が声を荒げた。

あまりの衝撃に誰も返答しなかった。

数十秒して、誰かが冷静な声で言った。

「よく見て欲しい。

牧草がない。

みんな食べきってしまったんだよ。

途中でエサがなくなって

ほとんどの牛が餓死したんだ!」

 

 

このエピソードを知った時

私は直観的に「ウイルスと同じだ」と感じた。

コロナウイルスで世間は持ち切りだが

ウイルスと人間との関係性に似ている。

 

ウイルスは牛で、人間が草になる。

つまり、ウイルスは人間をエサとしているが

その結果人間を殺してしまい、自分も死ぬ。

いわば「ウイルスの自殺」である。

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人間の生活も

時にはウイルスほど愚かなことをするのだ。

 

では

牧草地の農家たちはどうすればよかったのか?

繰り返しになるが

「人間は自分にとって一番得」な行動をとる。

牛に牧草をたくさん食べさせて高く売る。

これが一番得だ。

牛を解放するという手段は間違っていない。

しかし

その結果「牧草が足りない」という

困難」に陥った。

この困難を防ぐ必要がある。

その為にあるのが「規範」といわれるものだ。

 

「規範」とは

「牛を放し飼いにすると

お互いに商売できなくなるから、

牛の放し飼いは禁止しよう」

というルールである。

これを守ることで

結果的に、多くの農家が得をするわけだ。

これをゲーム理論では「協調」という。

 

一人のBESTではなく

協力するみんなのBETTERを選ぶ。

結果的に大局で見ればそれがBESTだ。

こうゆう考えである。

 

③裏切られたらどうする?半沢直樹は最強の戦略家!?

 

囚人のジレンマであれ

牧草地の悲劇であれ

お互いに協力すれば問題ない。

 

しかし、そんなに甘くない。

必ず「裏切る」奴がいる。

 

 

ルールをつくって

みんなで守っているのに

一人だけ抜け駆けするやつ。

 

2人の信頼関係の上になりたつ

秘密の話なのに

勝手にバラす奴。

 

こんな奴等が

あなたのそばにもいるはずだw

 

では、裏切られたあなたにとって

奴等に対する最高の戦略とはなんだろうか?

それは「しっぺ返し」である。

これは科学的にも実証されている。

 

相手が「協調」していたら

こちらも「協調」。

 

相手が「裏切る」ことをしたら

こちらも「裏切る」。

 

つまり

やられたらやり返す!

半沢直樹こそ最強のゲーム理論戦略家なのだ。

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次回は

現在の企業どうしの生き残り合戦を

ゲーム理論の立場で解説する。

 https://yoshiyoshiyoshix.hatenablog.com/entry/2020/06/28/231258